2020-01-10から1日間の記事一覧
「密やかな結晶」 記憶狩りによって消滅が静かにすすむ島の生活。人は何をなくしたのかさえ思い出せない。何かをなくした小説ばかり書いているわたしも、言葉を、自分自身を確実に失っていった。有機物であることに人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、現…
「すいかの匂い」 あの夏の記憶だけ、いつまでもおなじあかるさでそこにある。つい今しがたのことみたいに——バニラアイスの木べらの味、ビニールプールのへりの感触、おはじきのたてる音、そしてすいかの匂い。 無防備に出逢ってしまい、心に織りこまれてし…